黒澤明監督没後10周年という事で、随時放送されてきた全30作品も、年もおしせまりいよいよ大詰め。年末には晩年の5作品が毎日放送されています。記事をつくる時間も忙しさであまりとれないので、2作品まとめてご紹介します。
「影武者」
1980年/日本 (監)黒澤明
(演)仲代達矢 山崎努 萩原健一 根津甚八 大滝秀治 隆大介 油井昌由樹 桃井かおり 倍賞美津子 志村喬 藤原鎌足
☆☆☆★★★
黒澤明が武田信玄の死の謎と武田家の滅亡にまつわる壮大な物語を描いた超大作。「我が死を3年隠せ」という遺言を残してこの世を去った甲斐の名将・武田信玄。重臣たちは信玄の死を隠すため、信玄に瓜二つの盗人を影武者に仕立て上げるのだが…。
前作「デルス・ウザーラ」から5年。日本映画界は凋落の一途をたどっていて、この「影武者」へ資金を出す映画会社がなかなか見つからなかった。結局、コッポラとルーカスが20世紀フォックスでの世界配給の約束をとりつけてくれたおかげでやっと東宝が出資をする事になり、実現化する。
日本を代表する監督に、お金を出さない日本映画界の貧しさを感じるエピソードではあります。以降、「乱」「夢」とお金を出してくれたのは外国。
勝新太郎の主役降板騒ぎなどあったものの、無事に作品は出来上がり、映画は大ヒットとなる。私も、リアルタイムとしての黒澤作品体験はこの作品からはじまっていて、劇場に見に行きました。他の監督には決して真似の出来ない壮大な戦国絵巻ではあるものの、多少冗長な感じが否めませんでした。それに映画がカラーになってからは、どうも黒澤監督の色彩感覚に、私の趣味があわない事もあって、夢の中の信玄の亡霊のシーンなどもあまり好きではない。それとラストの合戦シーンも、スローモーションの多用などが気にかかりました。とは言えとても低い点数をつけられる作品ではありません。
役者では仲代はもちろん、山崎努、大滝秀治、新人では隆大介が良かった。ショーケンはミスキャスト。セリフが聞き取れない。三船敏郎のセリフが聞き取れなくても許せるが、ショーケンは許せない。(笑)
倒れてる馬たちは、麻酔をかけられてるだけだから安心してね。(笑)撮影後、馬たちは「まだ眠いな~」という顔でひきあげていったそうです。
「乱」
1985年/日本・フランス (監)黒澤明
(演)仲代達矢 寺尾聡 根津甚八 隆大介 原田美枝子 井川比佐志 ピーター 油井昌由樹 加藤武 植木等 田崎潤 宮崎美子
☆☆☆★★★
戦国時代を生き抜いてきた猛将、一文字秀虎は70歳を迎え、3人の息子に家督を譲る決心をする。彼は、長男太郎には家督と一の城を、次郎には二の城を譲り、反抗的な三郎は勘当してしまう。兄弟たちに協力し合うようにと告げていた秀虎を待っていたのは息子たちの反逆と骨肉の争いだった。
この作品の巨額な製作費を出してくれたのはフランス。シェイクスピアの「リア王」をベースに、毛利元就の三本の矢の話を下敷きにして描かれた作品。
最初、劇場で見た時は、いくぶん退屈したとう記憶があったのですが、今回再見したらとんでもなかったです。(笑)アカデミー衣装デザイン賞を受賞したワダエミの衣装もふくめて色彩の見事さも素晴らしく、合戦シーンのリアリズム、武満徹の音楽の素晴らしさ(今回はマーラー風)、そしてなにより、シェイクスピアが原作だけあって、人間ドラマの奥深さには感じ入ってしまいました。
「人間って何で殺しあうんだろうね。」「人間がいる限り殺し合いってなくならないのかね。」
黒澤監督が口にしたこの何気ない単純な疑問がこの作品のテーマでもある。仲代達矢がインタビューで語っていたのですが、真っ直ぐにテーマを見据えるゆるぎのない信念が、黒澤作品の真骨頂であり、これゆえに世界中から尊敬され続けるひとつの理由であると思う。
「影武者」ではかなり感じていた新人俳優達への違和感は、この作品ではほとんどなかった。特に原田美枝子はビックリする位良かったですよ。
この作品でアカデミー監督賞にもノミネートされていたのですが、結局シドニー・ポラックの「愛と哀しみの果て」が主要部門を受賞。プレゼンターにもなっていた黒澤監督からオスカーをもらったポラック監督は「賞を受賞した事より、クロサワから名前を呼ばれた事の方が嬉しかった!」と語っています。
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