ユメ十夜
2007年/日本
☆☆☆
いわずと知れた、夏目漱石の「夢十夜」を10人の監督がてがけたオムニバス作品。けっこう、楽しみに借りてきたのですが、もうはっきり言って、「どうすれば映画をつまらなく出来るか」という見本にしたい様な作品でした。日本映画の悪いところの展示会みたいな作品でもあります。
で、私、あんまりネガティブな感想を書きたくない方なので、ホントなら「10月に見た映画」でサラリと終わらせたいのですが、とにかくスタッフとキャストの人数が多いので、ここでまとめておく事にしました。
もうね~、記事にするからには言うぞ~、私は!(笑) そのために、「夢十夜」再読しました。準備万端だ!
第一夜
(監)実相寺昭雄 (演)小泉今日子 松尾スズキ
女が「もうじき死にます。100年待ってて下さい。」って言う話。
私は、初期のウルトラ作品以外の実相寺作品が好きじゃないので、これもダメ。
第二夜
(監)市川崑 (演)うじきつよし 中村梅之助
和尚に「侍なら悟りをひらけ!」とバカにされる話。
モノクロ。さすがに映像自体は完ぺきに美しい。サイレント作品になっているのも面白いし、原作にとても忠実。ただあまり面白味がないな・・と。
第三夜
(監)清水崇 (演)堀部圭亮 香椎由宇
多分、「夢十夜」の中で一番有名な話。おぶった自分の子供が、100年前に殺した男の生まれ変わりだった話。
「呪怨」の清水監督によるホラーになっている。ちょっとお話が肉付けされてるのが無用な感じ。そう悪くはないが安っぽい感じが否めない。堀部圭亮はなかなか良かった。
と、はや3本で少しがっかりしていたのですが、それはとんでもなかった!これ以降はひどい事になっていきます。2夜なんてこの中では不朽の名作だよ。
第四夜
(監)清水厚 (演)山本耕史
「手拭を蛇に変えるよ」と笛を吹きながら海に入っていくお爺さんの話。
このお爺さんの存在だけを使った別物の話になっていたが、まったく面白くない!飛行機が墜落、炎上したりする。なんじゃ、こりゃ。
第五夜
(監)豊島圭介 (演)市川実日子 大倉孝二
敵の手に落ち、死ぬ予定だが、一番鶏が鳴くまでの猶予で愛する女に会う事を許される話。
これさ~、設定を現代に変えて、ストーリーもまったく変えているのは良いんだけど、気持ち悪い分身がマヌケで何これ?って感じ。ニワトリが鳴くシーンだけをいただいてるんだよね。(分身が鳴くのだが)
第六夜
(監)松尾スズキ (演)阿部サダヲ 石原良純
仏師の運慶の話。
これは、つぼにはまればかなり笑える出来栄えなのは感じたけど、ここまででかなりうんざりしてきている私は、素直に笑えない。ただ、ラストの石原良純のシーンはさすがにおかしかった。
第七夜
(監)天野喜孝 河原真明 アニメーション
大きな船で航海しているのにうんざりし、海へ身を投げるが後悔する話。
これは一服の清涼剤の様な作品だ。こういう時アニメーションは本当に良い。役者達のワケわからない演技を見なくて済むだけでもどれだけ助けられるか。しかもアニメーションは「タツノコプロ・キャラクターデザイン」で有名な天野氏!セリフはすべて英語です。
第八夜
(監)山下敦弘 (演)藤岡弘 山本浩司
床屋の話。原作はもの凄く短くてほとんど事件が起こらないので、この映画はまったくの新しいストーリーにしてしまっている。藤岡弘のキャラを中心にしたいのだろうと言う事だけはわかったけど、後は意味不明。
第九夜
(監)西川美和 (演)緒川たまき ピエール瀧
夫が死んでいるのも知らず神社で願掛けする妻の話。
設定を第二次大戦中に変えてある。だから何?って感じ。願掛けする女の艶っぽい姿を描きたかったのか?西川監督なのに、ホントがっかりだよ。
第十夜
(監)山口雄大 (演)松山ケンイチ 本上まなみ 石坂浩二 安田大サーカス
豚と戦う話。
悪趣味、お下劣、ばかばかしいの極みの作品。ま、これがこの監督の持ち味の様だから仕方ないんだろうが。
プロローグ(明治)とエピローグ(現代)には戸田恵梨香が出てきます。
こんでお終い。そしてお約束のどう~でも良い歌謡曲風テーマソングが流れてきて、この映画に最後までつきあったやるせなさに最後の鉄槌がおりてきます。一夜で流れてた「ツィゴイネル・ワイゼン」でも流せば良いじゃないか!?せめて、六夜で運慶が踊ってたテクノミュージュックを流すとかさ。なぜ、歌謡曲なんだ~~~!?最低だよ、ホント。
とにかく、夢の世界の様なアヴァンギャルドな世界というのは、いかに映像化するのかが難しいかがよくわかった気がしました。皆、それぞれ、それなりの感性で、あれこれ工夫をして、自分らしい映像美を演出したかったんだろうが、ことごとく失敗していると思う。少なくとも私の感性では。
レビューを見ていると、「よくぞここまで漱石を冒涜できるものだ」という感想が多かったけど、その辺は別にかまわないと、私は思った。なにしろ夢の中での出来事だから、基本的には何でもありなんですよね。チャレンジしてみる事自体は決して悪い企画ではないと思うし。
ただ、ただ、「レベルが低い」としか言えないのが辛いところです。
もう、漱石の原作とは全くの別物だと思えば腹もたちません・・っていうか、久しぶりで再読した「夢十夜」は、素晴らしいの一語でした。本も後で記事にしようと思います。
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コメント
俳優さんが売れっ子だらけというのも、あまりにつまらなければ、かえって悲しいですね。松尾スズキなんか、持ち味発揮しても全体として相殺されているようですし。
この映画の実態を確かめたいですが、勇気がでません 笑
投稿: 裂織 | 2009年10月27日 (火) 01時53分
裂織 さん
こんばんは。
でも、かえって人気俳優が出てる方が、演技を楽しんだりもできるから良いと思う。
無名の俳優ばっかりだったら、目もあてられないよ、これ。(笑)
松尾スズキのは、運慶がテクノダンスみたいの踊ったりしてけっこうおかしいんだよ。モノクロで、意味もなく英語の字幕がはいってます。
10作の中で一番良かったのは2夜の市川崑、次が7夜のアニメかな。3夜の怖いやつと、6夜の松尾スズキのはまあまあって感じです。
それにしても、ちょっとお勧めは出来ないな~~。
投稿: ごみつ | 2009年10月28日 (水) 00時01分
こんばんわ
なんだかキャスティングが適度にマニアックで


良さそうなのかな、と思っていたのですが…
もしやその「適度さ」もネックになったのでしょうか…
「夢十夜」、読んでみたくなりました
私はミーハー娘なので、あまり名作とか読んでないのです(´Д`;≡;´Д`)アワアワ
ごみつ通信を読むと、「これは読んでおきたいな」と
いう作品がいっぱいなので、困ってしまいます
フラナリー・オコナーの本も気になってますが、
ビビリでそっちにコメントできませんでした
うるる
投稿: ripple | 2009年10月28日 (水) 22時52分
Ripple さん
今晩は。
これね、見てもらえば私がなぜ、なぜ、憤っているのかわかってもらえると思うよ。(笑)
ひまつぶしには良いかもよ。私は面白くなかったけど、人によっては感性のあう作品もあるかもしれない。好きな俳優さんが出てれば、それだけでも楽しめるかもしれないしね。
「夢十夜」を読んでおくと、それぞれの作家がどういう風に作品をアレンジしてるかわかって面白いと思う。「夢十夜」はとっても短い作品です。文庫の中には、その他の漱石のエッセーみたいのが収録されてます。
「F・オコナー」はちょっと重たすぎるかも・・。



投稿: ごみつ | 2009年10月28日 (水) 23時59分
10人の監督さんでオムニバスで、というアイデアはなかなかおもしろいですね。
短編でしたら、いっそのこと、監督さんの卵とか学生さんとかにどんどん作らせて、コンペティションみたいにしたら、意外と傑作が生まれるかも…。
プロの監督さんだから、ちょっと手を抜いて遊び心で作ってしまったのかもしれませんね。
投稿: セレンディピティ | 2009年10月29日 (木) 10時36分
セレンディピティ さん
今晩は。
お返事遅くなってすみませんでした。
そうですね!映画を勉強している学生さんとかに作らせてみても、面白い作品が出来そうですね。

ただ、とにかくお話の設定が「夢」なので、イメージを映像化するのはとても難しそう。
ただ、その分、やりがいもありそうですよね。
その時には、誰かの(漱石とかの)夢ではなくて、それぞれ自分が見た夢だと、もっと面白そう!
投稿: ごみつ | 2009年10月30日 (金) 22時38分