壊れても仏像 ~ 文化財修復の話
飯泉太子宗(いいずみとしたか)著 白水社
ISBN 9784560031995
昨今は、なかなかの仏像ブーム。仏像関係の書籍も多数出版され売れ行きも好調です。
そんな仏像出版ラッシュの中、職場のバイトさんから勧められてお借りしたのが今回のこの本。なかなか面白かったのでご紹介させていただきます。
著者の飯泉氏は、日本で唯一、国宝・重要文化財の仏像を修理することのできる施設、「財団法人美術院」に在籍し、そこで様々な壊れた仏像の修理に携わってきた方。現在は独立して、古仏修理工房を設立、NPO活動による文化財の修復を行っているそうです。
そんな著者による、修復の現場から見た、仏像のあれこれが、本人のかわいいイラスト入りで、素人向けに軽いエッセー調で語れていて、とても読みやすい本でした。著者も本の中で語っていたのですが、仏像に対する「美術愛好家」的な視線や、宗教的思い入れによる仏像LOVE!な力みがまったくなく、修復のための技術者としての視点が貫かれているのが、読みやすく、わかりやすい理由だと思いました。
実際、仏像を修復する際には、儀式を行って仏の魂を抜き、ただの木の塊にしてから作業に入るのですね。仏像は、魂を入れない限りはただの彫刻作品。
その他面白かったのは、仏像が寄木造りの場合、その製作技術はプラモデルとかなり似通っていると語っていたところ。著者曰く「たぶん、仏師に木彫りのガンダムを掘らせてもかなりうまく作るはずだ。 ~中略~ ちなみにガンダムのような戦闘用ロボットは、仏像で言えば四天王や十二神将のような軍事系天部に相当する ~ 中略 ~ そのまま、百年もおいておけば、古色蒼然としたガンダムが完成する・・・かと思う。」![]()
渋い、ガンダム仏像。見てみたい。(笑)
序盤で仏像に関する基礎知識みたいなお話があった後、修復がらみのお話になります。
「形あるものはいずれは壊れる」
仏像も長い時間の中で、にかわがはがれるなどして、必ず壊れる時を迎える。古い時代の仏像は必ず何度かの修復が行われており、仏像を守り続けたいという人々の熱い思いが継続しないと、仏像は生き残れない運命にある。その他、ネズミはかじるし、虫喰いもある。湿気で腐るし、乾燥すればひび割れる。
国宝級の作品はともかくも、実は予算のない自治体のもとにある仏像は、かなりの危機を迎えている作品も少なくないらしいです。生きている人間がもちろん一番大事なので、文化財保護等にまわされる予算は最後の最後。
また、住職のいなくなってしまったお寺に安置されている仏像の管理が、檀家などの住民にまかされてしまっているところもあるらしい。とある集落では、仏像の修復のために、マスコミによびかけ、住民だけでは負担しきれなかった修復の予算の寄付に成功したところもある様です。そこは、必要経費800万円に対し、世帯数が35件しかない集落だったのです。(ただし、お寺に住職がいる場合は特定の団体に対する利益の斡旋になってしまうので難しいらしいです。)
こういう解決策もあるのだな・・と感心すると同時に、著者が独立してNPO活動をはじめたのも、名もなき地方の仏像を守りたいという思いがあったからなのだろうな・・と感じました。
そして、やはり、仏像とは人々の信仰の対象であって、単純な彫刻品ではないと言う事。博物館で美術品の様に観賞するものではなく、安置されているお寺へでかけて言って参拝すべきものなのだな・・という事も痛感しました。美術館では魂も抜かれた状態だし、それに、古い仏像を移動させるのは、仏像へのダメージも相当大きい様です。
あれこれと勉強になった1冊でした。
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