書籍・雑誌

文鳥・夢十夜

夏目漱石著 新潮文庫
ISBN 9784101010182
☆☆☆★★★

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先日見た映画の「ユメ十夜」の記事のために再読したもの。

「こんな夢を見た。」という一語からはじまる十編は、いずれもどこまでが彼の実際の夢で、どこからが虚構なのかはわからないけれど、こうして漱石が「夢」と言うものを作品化した事は、本当に興味深いです。

研究者の間では、この作品は、漱石の無意識下にある、願望、不安、恐怖、虚無などを描いた作品として心理学的に論じられる事が多いらしい。とらえどころのない「夢」と言うものをここまでの作品に仕立て上げた漱石の筆の力に感心するとともに、人間の潜在意識を脳内で映像化して見せる「夢」と言うものにあらためて興味が湧いてきました。

昔、フロイトの「夢判断」「精神分析学入門」を読んだのですが、当時は「何か違うんじゃないか?」という疑問を感じたものでした。何だか、あらためて読んでみたくなっています。

「文鳥」は短く、儚く、心に寂しさを感じさせる作品でした。飼っていた小さな文鳥を不注意から死なせてしまうまでの短編ですが、漱石は鳥の姿に、昔、関係を持った女性の姿を重ねあわせて描いていく。「たのみもせぬものを籠へ入れて」死なせた文鳥の命のはかなさと、残酷さ。鳥のかわいらしい仕草や、「千代々々」(ちよちよ)と聞こえてくる鳴き声の描写に、鳥を飼っている者としては胸がしめつけられます。

さて、この作品には、エッセーの様な小品が幾つか収録されているのですが、今回の読書ではそちらの作品群の方に、より心を動かされました。

「永日小品」の中で描かれる、小さなスケッチの様な文章は、様々なテーマで描かれていて、とても楽しく、漱石の人となりも身近に感じられます。元旦に高浜虚子と謡をうたうエピソードだとか、泥棒に入られた話だとか、イギリス滞在中の幾つかのエピソード、子供時代の思い出などが小さな文章にまとめられ、私はとても楽しく読みました。

「思い出す事など」は、胃潰瘍で大量に吐血し、生死の境をさまよった後に、療養し回復するまでの漱石自身の心中が語られていて、これは本当に胸をうちました。死を目の前にした彼は、自らの人生に対する様々な思いを告白していく。ひとつひとつの段落の最後には、必ず俳句か漢詩が読まれています。

漱石は門外漢の作品である自分の俳句や漢詩が、決して上出来のものではない・・と前置きをした上で、次の様に語っています。

「前略 病中に得た句と詩は、退屈を紛らすため、閑に強いられた仕事ではない。実生活の圧迫を逃れた我が心が、本来の自由に跳ね返って、むっちりとした余裕を得た時、油然と漲り浮かんだ天来の彩紋である。後略」

そしてこの心情(風流を盛るべき器)が、「不作法な十七字と、佶屈(難解)な漢字」である事を忍んで、風流を這裏に楽しんで悔いざるものであると語る。

江戸時代末期に生まれ、明治維新を経て、西欧と格闘し続けてきた漱石の、絶ち難い東洋への想いが感じられると同時に、この時期を境にいかに多くの古き美しいものを、日本人は捨て去ってきたのかを痛感もしました。

後書きの解説の中でとりあげられていた漱石の言葉が興味深かったので、最後に。

自然主義(リアリズム)者達から漱石の文学は「拵えもの(こしらえもの)」であると批判された彼は、「拵えものである事を苦にするよりも、活きているとしか思えぬほどに拵えることに苦心したら如何か」と反論しているそうで、私は痛快に感じました。

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フラナリー・オコナー全短篇集

フラナリー・オコナー著 ちくま文庫
上巻  ISBN 9784480425911
下巻  ISBN 9784480425928
☆☆☆☆

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実はこの本は、まだ「三国志」を読んでいた夏頃から外出時に持ち歩いて、少しづつ読みすすめていたのですが、ようやく読了。

著者フラナリー・オコナー(1925~1964)は、難病(紅斑性狼瘡・膠原病の一種)に苦しみながら39歳で亡くなる。25歳で発病してから亡くなる直前まで、精力的に書き続けたアメリカの女流作家です。

~ その残酷なまでの筆力と冷徹な観察眼は、人間の奥底にある醜さと希望を描き出す。キリスト教精神を下敷きに簡潔な文体で書かれたその作品は、鮮烈なイメージとユーモアのまじった独特の世界をつくる。~ (文庫解説より)

ひとつ、ひとつの作品を、作家の魂がベールの様に覆い尽くしている。人間の存在の愚かしさとグロテスクさ。そしてその遥か先に訪れるのであろう魂の救済を描くために、彼女は一切の躊躇のない、時には残酷で、時には暴力的な描写をつらぬいています。

短篇集ではあるけれど、とても幾つも、幾つも、連続して読み続けられる様な作品ではないのです。

「三国志」の世界に思いを馳せていた私は、彼女の作品を読む度に、自分が生きていかねばならない現実社会の醜さの前に何度も連れ戻された。我に返ったかの様にキョロキョロとあたりを見回したくもなった。こういう世界を持っている作品こそが、真に文学作品と呼べるものなのではないだろうか・・と感じながら電車を降りる毎日が2ケ月ほど続いたのでした。

オコナーはアメリカ南部ジョージア州出身で、敬虔なカトリック教徒だった。描かれる題材は、すべて南部の土地であり、南部の人間達です。登場人物達は、キリスト教に呪縛され、その呪縛からのがれ様ともがくインテリ達も決してそれを許される事はない。

いつもながら、キリスト教の教えを肌身で理解できない日本人には、なかなか理解しずらい内容だとも思う。西洋人は、いつでもキリスト教を支えにし、かつ戦い続けている。この感覚が完全に理解できないと、本当はニーチェが発狂するまでに至る、神との戦いの過程も理解できないのだ。私はそれがとてももどかしい。

上巻は短篇集"A Good Man Is Hard To Find"(善人はなかなかいない)と初期の作品から構成。下巻は短篇集"Everything That Rises Must Converge"(すべて上昇するものは一点に集まる)と後期作品から構成されています。

ながらくなかなか(和訳では)読めない作家でしたが、今年、筑摩書房から文庫版が刊行になりました。ありがたい事です。book

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墨攻

「墨攻」
酒見賢一 著 新潮文庫 ISBN 9784101281124
☆☆☆★★★

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戦国時代の中国、特異な非攻の哲学を説き、まさに侵略されんとする国々を救援、その城を難攻不落と化す謎の墨子教団。その教団の俊英、革離が小国・梁の防衛に派遣された。迫り来る敵・趙の軍勢は2万。梁の手勢は数千しかなく、城主は色欲に耽り、守備は杜撰であった。果たして革離はたった一人で城を守り通せるのか―史実を踏まえながら奔放な想像力で描く中島敦記念賞受賞作。 (文庫解説より)

「泣き虫弱虫諸葛孔明」があまりにも面白かったので、早速他の作品も読んでみようと買ってきた1冊。

「墨子教団」っていう存在を、私この本ではじめて知りました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A2%A8%E5%AE%B6

中国戦国時代に墨子によって起こった思想家集団「墨家」。博愛主義(兼愛交利)を説き、その思想に基づいて、武装防御集団として各地の守城戦で活躍した。戦国時代には儒家と並び最大勢力となったが、秦の中国統一とともに消滅してしまう。

この本は、教団のメンバーの革離と言う男が、たった一人で2万の軍勢から城を守る姿を描いた短い小説。お話のあいまに、酒見氏による解説が入ってくるのですが、墨子自身が語った「一人の人間を殺せば不義であり死罪に値する ~ 中略 ~ 戦争となると大いに人を殺しても、称賛され義とされる。不可解ではないか・・」っていう言葉は、チャップリンの「殺人狂時代」の中でチャップリンが言うセリフとまったく同じ!チャップリンは墨子思想を知っていたのだな・・と驚きました。

西欧人の中には、彼らの博愛主義を、イエス・キリストの教えと比較する人もいるらしいが、酒見氏は墨子の戦闘集団としての一面を見落としている事を指摘しています。墨子教団とは軍事技術者の集団であり、戦国時代最高のレベルにあったらしい。

と、長くなってしまいましたが、何だかとっても不思議な団体で、気になって仕方ありません。諸子百家の中でもかなり稀有な思想の様です。およそ中国らしからぬ思想らしい。この作品自体は、史実をベースにしたフィクションで、守るだけとは言え、やはりかなりの人間が死にます。戦とはそもそもそういうものなのでしょうが。

さて、その後、映画も見ました。

「墨攻」
2006年/中国・日本・香港・韓国 (監)ジェイコブ・チャン
(演)アンディ・ラウ アン・ソンギ ワン・チーウェン ファン・ビンビン
☆☆☆★★

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この作品、酒見氏の小説そのものではなく、小説をもとにコミカライズされた森秀樹の同名コミックをもとに映画化されています。コミックは未見なのですが、やはり、映画向きにあれこれと設定が変更になっていました。

とにかく先に本を読んでおいて良かったと思いました。だって、墨子教団についての説明が映画ではあまりにも少なくて・・。

主人公の革離を演じるのはアンディ・ラウ。映画では10万の趙の軍勢に全住民4000人で立ち向かうという設定になっていました。CGもけっこう使っていて視覚的にも楽しめるし、娯楽映画としては悪くない作品だと思いました。ファン・ビンビン演じる女性指揮官とのちょっとした恋愛ムードのシーンが入るのは余計だけど、まあ映画なので仕方ないと思える範囲でした。

とにかくアンディ・ラウが良いので、それだけでも満足です。ルックス的には、そう好みではないのですが、彼は雰囲気があるし、演技がうまいのよね~。何だか、最近お気に入りです。

本から読むのがお勧めですが、映画でビジュアルからはいるのも良いと思います。なお、本の方には、南伸坊のステキな挿絵もあります。

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ここで、またまた松岡正剛氏の書評サイト「千夜千冊」から墨子に関する面白い記事を発見しました。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0817.html

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クレヨン・ハウス

今日はお休みでしたので、友人と3人で、表参道で待ち合わせ。クレヨン・ハウスの地下にある、オーガニック・レストラン「広場」でランチバイキングを楽しんできました。
http://organic.crayonhouse.org/

クレヨン・ハウスは落合恵子さんが主宰する(代表取締役)、絵本や、女性問題、オーガニックライフを提唱するお店や出版物を発行しているところです。

ランチの内容は日替わりの様で、14日のメニューは下記の通り。

・ゆうゆう鶏手羽先のオーブン焼き ローズマリー風味
・ほくほくフライドポテト マスタードマヨネーズ添え
・新鮮!有機キャベツのカラフルスチーム バルサミコ風味
・島田さんのおいしいお豆腐 たっぷりしらすと海草をのせて
・有機ニラと豆もやしの本場韓国ナムル
・とれたて有機リーフのミモザサラダ

ご飯は玄米か胚芽米からチョイスできて、どちらも凄く美味しかったです。お味噌汁も薄味。メニュー全体が、とってもヘルシーで、店内は女性のみならず。男性のサラリーマンもチラホラ。食べ放題で¥1,200です。

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友人達との待ち合わせにかなり早く着いてしまったので、待っている間に1階にある絵本の売り場を見てまわりました。和書、輸入物も含めて絵本一色。
http://ehon.crayonhouse.org/about

そこでみつけたこの本!

ももいろのきりん (福音館創作童話シリーズ)
中川 李枝子 (著), 中川 宗弥 (イラスト)
出版社: 福音館書店 (1965/07)
ISBN : 978-4834000443

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あまりの懐かしさに声をあげてしまいそうになりました。私、この絵本が大好きで大好きで何度も読んだものでした。今の今まですっかり忘れていたのでず~っとロングセラーだったんだ・・と嬉しくもなりました。思わず買おうかと思ったのですが、1400円近くするのでとりあえず断念。どうしても欲しければ社販で買おう。

さて、ここで私が何十年も探し続けている本が見つけられるかと思ったのですが、ダメでした。やっぱ迷宮入り? (T_T)

探している子供向け本に関しての記事はこちらから。情報求む。
http://gomitsu.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-9fe3.html

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壊れても仏像 ~ 文化財修復の話

飯泉太子宗(いいずみとしたか)著 白水社
ISBN 9784560031995

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昨今は、なかなかの仏像ブーム。仏像関係の書籍も多数出版され売れ行きも好調です。

そんな仏像出版ラッシュの中、職場のバイトさんから勧められてお借りしたのが今回のこの本。なかなか面白かったのでご紹介させていただきます。

著者の飯泉氏は、日本で唯一、国宝・重要文化財の仏像を修理することのできる施設、「財団法人美術院」に在籍し、そこで様々な壊れた仏像の修理に携わってきた方。現在は独立して、古仏修理工房を設立、NPO活動による文化財の修復を行っているそうです。

そんな著者による、修復の現場から見た、仏像のあれこれが、本人のかわいいイラスト入りで、素人向けに軽いエッセー調で語れていて、とても読みやすい本でした。著者も本の中で語っていたのですが、仏像に対する「美術愛好家」的な視線や、宗教的思い入れによる仏像LOVE!な力みがまったくなく、修復のための技術者としての視点が貫かれているのが、読みやすく、わかりやすい理由だと思いました。

実際、仏像を修復する際には、儀式を行って仏の魂を抜き、ただの木の塊にしてから作業に入るのですね。仏像は、魂を入れない限りはただの彫刻作品。

その他面白かったのは、仏像が寄木造りの場合、その製作技術はプラモデルとかなり似通っていると語っていたところ。著者曰く「たぶん、仏師に木彫りのガンダムを掘らせてもかなりうまく作るはずだ。 ~中略~  ちなみにガンダムのような戦闘用ロボットは、仏像で言えば四天王や十二神将のような軍事系天部に相当する  ~ 中略 ~ そのまま、百年もおいておけば、古色蒼然としたガンダムが完成する・・・かと思う。」coldsweats01

渋い、ガンダム仏像。見てみたい。(笑)

序盤で仏像に関する基礎知識みたいなお話があった後、修復がらみのお話になります。

「形あるものはいずれは壊れる」

仏像も長い時間の中で、にかわがはがれるなどして、必ず壊れる時を迎える。古い時代の仏像は必ず何度かの修復が行われており、仏像を守り続けたいという人々の熱い思いが継続しないと、仏像は生き残れない運命にある。その他、ネズミはかじるし、虫喰いもある。湿気で腐るし、乾燥すればひび割れる。

国宝級の作品はともかくも、実は予算のない自治体のもとにある仏像は、かなりの危機を迎えている作品も少なくないらしいです。生きている人間がもちろん一番大事なので、文化財保護等にまわされる予算は最後の最後。

また、住職のいなくなってしまったお寺に安置されている仏像の管理が、檀家などの住民にまかされてしまっているところもあるらしい。とある集落では、仏像の修復のために、マスコミによびかけ、住民だけでは負担しきれなかった修復の予算の寄付に成功したところもある様です。そこは、必要経費800万円に対し、世帯数が35件しかない集落だったのです。(ただし、お寺に住職がいる場合は特定の団体に対する利益の斡旋になってしまうので難しいらしいです。)

こういう解決策もあるのだな・・と感心すると同時に、著者が独立してNPO活動をはじめたのも、名もなき地方の仏像を守りたいという思いがあったからなのだろうな・・と感じました。

そして、やはり、仏像とは人々の信仰の対象であって、単純な彫刻品ではないと言う事。博物館で美術品の様に観賞するものではなく、安置されているお寺へでかけて言って参拝すべきものなのだな・・という事も痛感しました。美術館では魂も抜かれた状態だし、それに、古い仏像を移動させるのは、仏像へのダメージも相当大きい様です。

あれこれと勉強になった1冊でした。

Hanka

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泣き虫弱虫諸葛孔明

酒見賢一著 文藝春秋刊
第壱部 ISBN 9784163234908
第弐部 ISBN 9784163251202
☆☆☆☆

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ああ、なぜ私はこの本を先に読んでしまったのだろうか・・。

「図説・三国志入門」「徹底解剖 諸葛孔明」的な初心者向けマニュアルやら, 「正史・三国志」もとりあえず蜀の巻だけ買った。一応、基本を押さえた上であれこれ読んでみようという魂胆であったのです。(私はしつこい女なのです。)

今回読んだこの作品は、ハードカバーでそれぞれ500ページ近い本。レビューを読むとやたらと評判が良く楽しみだったのですが、ちょっとパロディ入ってる様子だったので後で読もうと思っていたのです。

「出だしだけでもちょっと・・・」なんていやらしい事をしたのが運の尽き。徹夜を繰り返すこと数日で、あっという間に全部読んでしまいました。これね・・読み始めたらもう決してとまりません。(レビューにもそう書いてあったのに・・。)

この作品の面白さを誤解される事なく、どうやったら伝えられるか悩んでいるのですが、とにかくこれほど笑った本は今までにない!っていう位笑えます。外では決して読めませんのでご注意下さい。恐らく「三国志」を知らなくても笑えます。ちょっとでも知ってたら死ぬほど笑えます。

孔明のところに、妻が嫁いでくるシーンでは、息がとまって死ぬかと思うほど笑ってしまった。その次に笑えたのが、単福(徐庶ね)が、劉備軍にとっつかまって死にそうになりながら仕事させられるところ。

あ、忘れちゃならない、英訳版「三国志」に関するところも悶絶するかと思った。そうだ、それについては洋書案内としてあらためてご紹介します。

1巻目は「三顧の礼」で、孔明が劉備軍の軍師となるところまでで、2巻目は「長坂坡の戦い」まで。

この本が凄いのは、涙が出るほど笑えながら、途中であれこれと説明される蘊蓄で、軽く勉強できるところにもあります。著者の酒見氏は、アンディ・ラウ主演で映画になった「墨攻」の原作者で、この映画の原作が日本の作品だとはじめて知りました!その他、孔子がらみのファンタジー?「陋巷に在り」っていうシリーズを書いている作家さん。は~、私もまだまだ知らない作家がたくさんいるものよ・・と深く反省することしきりです。

しかし、序文を読むと、酒見氏は「三国志」にはまったく興味がなかったにも関わらず、自身のデビュー作を「三国志」と比べられた事がきっかけで読む事にしたらしく、それがいつの間にやらこんな作品まで書くに至ったとは、何だかこれも孔明に仕組まれた事ではないの・・なんて思ってしまう位です。(笑)

それに、これだけパロられた描写をされながら、なおかつその魅力を寸分たりとも失わない孔明様への私の愛は、さらにさらに強くなるのでありました。(笑)

そうだ、カリスマ男の劉備(矢沢永吉とかフレディ・マーキュリーみたい。)、凄いです。孔明の言うことまったく聞きません。

さて、2巻目の最後、長坂坡の戦いの最中にのこのこ訪れてきた呉の魯粛は、劉備と孔明にとっつかまり、脅かされ、無理やりお友達にされてしまいます。しかも、2人と行動をともにするうち、魯粛の自我は崩壊。(笑)カリスマ劉備にからめとられ、すっかりマブ達に・・。そうか・・だから、「レッドクリフ」ではあんなに味方になってくれてたんだ~~と、妙に納得。(笑)

あ~、もう次の巻が待ちきれない!恐らく来年あたり刊行だとは思うのですが・・・。良かったら、図書館ででも借りてきて是非是非、読んでいただきたい作品です。(諸葛孔明に)騙されたと思って是非!

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黒澤明という時代 - そして現在の映画評論に思うこと

小林信彦著 文藝春秋刊 ISBN 9784163717203
☆☆☆★★★

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著者の小林信彦氏は基本的に作家なのですが、本や芸能に関しての著述をまとめた作品も多く、その手の作品はとても面白くて、昔からけっこう読んでいます。特に映画に関しては、感受性の違いはもちろんあるものの、私にとっては、とっても「正しい映画の見方」をしている人なので大好きなのです。

で、そんな彼の「黒澤作品を語る」本が出版されたので、喜びいさんで購入。今までも、ポツポツと、彼の黒澤作品評は目にしていたのですが、これは年代順に全作品に関しての著述があり、その時代の空気感を感じさせてくれる、とてもありがたい内容です。

黒澤監督のデビュー作「姿三四郎」が封切られたのは、小林信彦氏が11歳だった戦時下の昭和18年。この作品が当時どれだけ衝撃的な作品だったかを、後から見た者は決して理解できないだろうと彼は語る。

「私の表現を大げさと思う読者がいるかもしれない。文学でも、映画でも、その作品が発表された時の衝撃 - この言い方が強すぎるとすれば、人々の中にじわじわと広がっていく波のようなもの、と言い変えてもよいのだが、これはリアルタイムで接した観客にしかわからないと思う。」

このスタンスで、彼は以降の黒澤作品に関するあれこれを語っていくのですが、まことにもって幸福な事だな~と羨望を感じてしまいました。私と黒澤作品のリアルタイムは「影武者」からだもの・・・。

黒澤作品のそれぞれに関しては、このブログで全作品をとりあげたので、ここまでにするとして、黒澤明ファンの方々には是非読んでいただきたいと思った1冊です。

実は、今回は、この作品の紹介とともに、私が昨今感じている日本の映画評論のシーンについて書いてみたいと思ったのです。(もちろんプロとして仕事をされている人の事です。)

その昔は、私も映画雑誌を購入し、映画評論家の書いた文章を読み、テレビの映画劇場の解説など聞きながら、映画への愛をさらに深めていったものでした。映画をどう見るかという姿勢については、最も敬愛している双葉十三郎氏に最も影響されているのですが、実は文章化する時には小林信彦氏のまねっこになっている場合が多いんですよ。(笑)

ところが、最近は、映画についてきちんとした事を書ける人が激減しています。っていうか、きちんと「映画評論家」の肩書で仕事をしている人もあまりいないんですよ。気が付いてました?

例えば、先日見に行った「レッド・クリフ Part 2」のパンフレットの中で語ってる人達は、一人は「映画ライター」、もう一人は「映画感想家」ですから。評論家と言う言葉がえらそうだから・・と肩書を変えるのは別にかまわないんですが、ぞれぞれその名の通りの内容しか書いてないとしたら、それは逃げじゃないか・・って私は思うのです。

その他、「シネマエッセイスト」だの「映画コラムニスト」だのワケわかんない職業名にあふれているんですよね~。もうこういう逃げモードの人達の書いたものはどうしようもない。映画のパンフだったら、時代背景について大学の先生の解説だとか、例えば気象学者だの、フランス文学評論家だの、その他のプロの方が、文章を寄せている事がありますが、そういう人たちの書いたものの方が500倍位読み甲斐ありますよ。

私にとっての映画評論家と言うのは、簡単な様ですが、「映画としてのその作品の評価」がきちんと出来る人の事です。誰でも好みがあり、物凄い名作でも肌があわない事もあるし、最低作品でも大好きな事もあります。今は、その肌合いでしか、映画を語れない評論家ばかり。

ここで、ちょっと前に読んでけっこう感心してしまった映画評論本をひとつご紹介します。

「バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争 2007-2008年版 邦画バブル死闘編」
柳下毅一郎、江戸木純、クマちゃん 著 洋泉社刊 ISBN 9784862483805
☆☆☆★★

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これ「映画秘宝」の連載だし、タイトルや表紙からしてくだらなそうだけど、内容は以外にしっかりしててビックリした本です。3人のおふざけ対談形式で笑えるのですが、ちょっと意地悪ではあるものの、映画に対してしっかりした感性がある人達っていうのが(特に柳下氏)わかって感動します。クマちゃんは匿名の人なのですが、他の2人はきちんと自らを「映画評論家」と名乗ってます。ほ~らね~!

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ミレニアム 1 ドラゴン・タトゥーの女

Man Som Hatar Kvinnor
スティーグ・ラーソン著 早川書房
上巻 ISBN 9784152089847
下巻 ISBN 9784152089830
☆☆☆★★★

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世界各国で驚異的に売れまくっているスウェーデンの作家、スティーグ・ラーソンによる話題のミステリー。

最初、英語版のペーパーバックが入荷してきた時、帯に「人口900万人のスウェーデンで290万部の大ベストセラー!」と書いてありビックリしたものでした。日本で言えば4000万部位売れてる事になります。

で、邦訳も出たので、早速1作目を読んでみました。

月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家ヴェンネルストレムの違法行為を暴露する記事を発表したが、名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れることになる。そんな時、大企業グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルは、兄の孫娘ハリエットがおよそ40年前に失踪した事件の調査を彼に依頼する。

ハリエットはヘンリックの一族が住む孤島で忽然と姿を消していた。ヘンリックは一族の誰かが殺したものと考えており、事件を解決すれば、ヴェンネルストレムを破滅させる証拠資料を渡すとともに、多額の報償を約束する。ミカエルは依頼を受諾し、困難な調査を開始する。

深まる謎を調査するには助手が必要と感じたミカエルは、背中にドラゴンのタトゥーを入れ、特異な風貌をした女性調査員リスベットとともに謎の解明に迫っていく。やがて浮かび上がる忌まわしい事実とは?

お話の導入部分が、多少退屈。後になれば重要な部分なのだけれど、オープニングとしてはいまひとつな感じがした。ただ、リスベットの登場あたりからは、にわかに面白くなり、あっという間に読み終わりました。

1作目を読んだ感想としては、ミステリーとしては、皆が騒ぎ立てるほどの内容ではない・・というのが正直なところ。エンターテインメント小説としてはかなりの出来だとは思うのですが・・・。 ストーリーの広がりも大きく、ヴァンゲル家の背景なんかは、「犬神家の一族」的な興味もある。スウェーデンが抱える、歴史の暗い過去、実業家による犯罪、そして性犯罪のまん延等に関して、あれこれと知る事が出来るのも、外国人の読者には興味深いと思う。

そして何よりもこの作品を魅力あるものにしているのは、ミステリーの主人公としてはあまりにも特異な女性、リスベットの存在が大きいと思う。周囲の人間とのコミュニケーションがとれず、拒食症と間違われるほど痩せこけ、体中にタトゥーを入れ、眉と鼻にピアスをした、20代半ばの天才ハッカー。調査員としての力量は計り知れない・・という設定。

恐らく、2作目以降は彼女の活躍がメインになっていくのだろうと思う。続けて読みたいのですが、この早川版は、現在のところ1冊1600円以上する上下巻なので、ちょっときついな~・・と思っているところです。文庫になるまで待とうか・・・。

ところで、著者のスティーグ・ラーソンは、ジャーナリストで、この3部作を執筆した後に急死。1作目の発行も、作品の大成功も知る事なく50歳の若さで亡くなっています。

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三国志読了 後編

吉川英治著作 講談社文庫
(五)「出師の巻」「五丈原の巻」
ISBN 9784062761901
☆☆☆☆

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前編でも触れましたが新装版はこれが最終巻です。

曹操への攻撃に出た関羽は、孫権の家臣・藩璋によって討たれ、張飛も部下により暗殺されてしまう。その翌年、曹操が死去。曹操の息子、曹丕は献帝から禅譲を受け、魏王朝の皇帝となり、漢王朝は滅亡する。ついで劉備が蜀(漢)の皇帝に、呉の孫権も皇帝を名乗り、三国県立となる。

劉備は関羽の弔い合戦として呉へ進軍するが大敗。ショックのあまり死去する。後継ぎの劉禅は若く、君主の器ではなかったため、孔明が国の運営の全てを担う事になる。

孔明は魏をうつための憂いとなる南方の少数民族を鎮圧し、国内を平定した後、劉禅へ「出師表」(すいしのひょう)を送り、北伐へと向かう。しかし家臣の馬稷の命令違反により大敗。その後、戦いの相手が司馬懿仲達に変わり、一進一退が繰り返されるが、五度目の北伐で五丈原にて病に倒れ志半ばにして病死する。

その後の蜀と呉が滅亡し、魏内部での司馬懿のクーデターによりうまれた「晋」による全国統一までが続くのですが、吉川版は孔明の死をもって終了となります。

孔明の死以降をまとめて解説したものと、吉川英治の「孔明感」を記したものが「篇外余録」で、新装版にはこれがありませんので、買われるなら旧来の「吉川英治歴史時代文庫」全8巻をお勧めします。

「三国志」という作品は、英雄列伝であり、戦いのドラマなのですが、ふと人の世のはかなさを痛切に感じさせてくれる作品でもありました。お話の序盤から、戦い続けてきた者たちは、多くは途中で倒れ、三国県立までいきついた者たちの国もことごとく滅亡する。しかし、歴史の流れは止まることなく、悠久の時間の中を流れ続けていく。そういう意味で、この作品は「滅びの美学」を描いた作品でもありました。

この作品の中での諸葛孔明ほど、その才気と人間性に圧倒され、心をうつ人物に、フィクション、ノンフィクションを問わず、私は今まで出会った事がありません。「三国志」の中でも、彼に比肩するだけの器の大きさのある人物はやっぱり曹操だけだと思う。ベクトルは違うんですけどね。

孔明の活躍に関しては、もちろん、脚色もされているだろうし、事実から大きくはずれている描写がほとんどなのかもしれない。吉川英治氏も述べている様に、孔明は自身に才能がありすぎて、人をうまく使う事も登用する事もできなかった様だし、何もかも自分で采配し過労死してしまう。これは、今の会社だったら、失格な上司ですよね。

それでも私は、彼が死の直前まで続けた、孤独な戦いが大好きだ。亡き劉備に対する義をつらぬく姿、堅実さ。私利私欲のない人物像。そういう人間が国のために全てを投げ打って、国政の重責を一人で担う姿。お話の中での彼の神業的な知略の数々をはぎとっても、最後にこの姿だけは残る。孔明なくして蜀帝国は決して生まれなかったと思うし、劉備亡き後はあっという間に破たんしていただろう。

つくづく私はこういうタイプの人間に弱いなあ・・と思うし、出来うるなら自身もそういう人間でありたいと思うのです。

ところで私は何かに凝ると非常にしつこい女です。で、また何冊か孔明がらみの本を買い込んでしまいましたので、また記事でご紹介するかもしれません。
「死せる孔明生きるごみつを走らす」です。(笑)

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「レッド・クリフ」の金城孔明様。後ろにいるのは呉の魯粛です。

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三国志読了 前篇

「三国志」読み終わりました。

え?この間、折り返し地点だったのに早くない?

別にスピード・リーディングで読んだワケではないのです。book

実は私が読んでいた「新装版」は全5巻だったのです~。5巻を読み始めて、はや関羽も曹操も亡くなり、孔明もこの巻で死んでしまうのがわかっていたので、てっきり私は、6~8巻まではその後晋建国までの話が続くのだろう・・と思っていたのです!

で、途中で何となくネットのブックレビューを見て、新装版は全5巻である事、最後の篇外余録がないという事がわかり、調べてみると各巻についている、著名人による吉川英治に関するエッセーや、「三国志の旅」っていう作品紀行もない事がわかり愕然!

なにはともあれ篇外余録は絶対に読みたいし、とにかく吉川英治歴史時代文庫版8冊を買いなおしてしまいました。まったく、どういう事なんだ!エッセーや紀行はともかくも篇外余録を削除してしまう講談社の意向が理解出来ない!クレームつけるぞ~~~。angry

200909092050000

なにはともあれ、5巻目の面白さは白眉(これ三国志からうまれた言葉なんですね。馬良の事。泣いて斬られた馬稷の兄。)でした。

まだ1回読んだだけなので、よく理解できていないところもあるし、登場人物も把握しきれていないのですが、本当に読んで良かったと思いました。「三国志」は吉川英治氏も語っている様に、物語の前半は曹操によって牽引され、後半(特に劉備の死後)は孔明中心の物語になります。

いや、もうとにかく、孔明の南蛮制圧から、北伐を開始した孔明と司馬懿仲達との戦い、そして孔明の死に至るまでは、まさに読むのを中止するのが苦しい位でした。孔明様と離れるのが辛くって・・・。

そう・・、私は諸葛亮孔明shineに、いまやもう夢中って感じです。(笑)

孔明に関しては後篇へ続く!

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